ホロデーツは、煮こごりになるまで冷えた、肉片が入ったスープを使った料理だ。
ロシアでさえ、多くの人が、肉の煮こごりであるホロデーツとアスピックは同じだと考えている。だが、厳密にはそうではない。アスピックは細長く引き裂いた肉を使わず、ゼラチンか寒天を使って固めたゼラチン状の汁に覆われた肉か魚の塊全体を使う。煮こごりの肉とホロデーツの場合、必要とされる堅さは適度な量の身体部位 (耳、すね、尾など、いずれも使用可能だ) によって達成される。
料理の愛好家が断言する通り、煮こごりにされた肉はロシア料理の一要素であり、その効果はすね肉、牛の頭などを煮た結果得られるものである (これは16世紀ロシアの生活規範集である「ドモストロイ (家庭訓)」においても言及されているほどだ)。 一方のホロデーツは、豚の身体部分を使って作るウクライナ料理だ。だが最近では、定義がそれほど厳格ではなくなってきている。今回作った料理でも、煮込んだ豚肉に牛のすね肉のスープを加えたが、すべて素晴らしい出来上がりになった。自分の好きなようにいろいろ試してみれば、ホロデーツも煮こごり肉も作り方が同じであるため、大方は同じ料理といえることが分かるだろう。
煮こごり肉は当初、使用人のための食べ物だったと考えられているが、それは驚くべきことではない。貴族のために特別に調理されたわけではなかった。何と言ってもそれは、どろどろと濁った灰色っぽいスープが煮こごり状態になった肉の塊でしかない。正確には、十分に食べられるものの、とても洗練された美食とは言えない廃棄物の、一種の副産物的料理である。時間の経過とともに人々は、汁の濁りをなくし、スープを濾し、レモンの皮やサフランで着色する方法を習得した。細切り肉には、ニンジン、レモンやパセリなどの明るい色でアクセントがつけられるようになった。
こうして煮こごり肉は、休日や祝日のご馳走の食卓を飾る料理へと変身したのである。だが、ホロデーツは特別な日の料理に出される料理以上の存在だ。これは、オリヴィエ、ミモザや毛皮を着たニシンといったサラダと同様に、ソ連時代のご馳走の切っても切り離せない料理の一部となっている。それは不当にも過食や暴食の俗物根性の象徴となってしまったが、それは全体主義の時代に許された数少ない楽しみの一つだったのだ。だが贅沢品ではなかった。事実、それは繁栄の象徴ではなく、倹約と、そして最も重要なことに、主婦の料理能力を示す料理であった。それはとにかく、材料を切ってバケツに放り込むオリヴィエサラダよりも、ホロデーツを作る方が多少は難しいと考えられた。
作り方は以下の通り。
1) 今日の料理の主な材料は牛のすね肉だ。他の部位を使用することも可能だが、重要なことはできるだけ多くの結合組織とコラーゲンが含まれているということだ。これを長時間煮込んで、冷却すると凝固するような濃厚なスープにする。
最初にすね肉のスープを作る必要がある。次に、 肉を鍋に収まるように切る。6リットルを注いで沸騰するのを待ち、灰汁を取る。とろ火にして灰汁を取り除き、ニンジンを2本、タマネギを2個、そしてセロリの根を4分の1本、それに月桂樹の葉、カルダモン、胡椒の実と丁字を香辛料として加える。
可能なら8時間ほど煮込む。
2) 一晩または8〜9時間が経過するとスープの準備完了だ。この時点でスープから野菜を取り除く。スープは煮こごりのベースになるが、今のところはそのままにしておく。
3) その代わりに、この料理に使う肉を煮込むことにする。野菜、スパイスに加えて、1キロ少々の豚肉も入れる。このスープにはしっかり塩で味付けする必要がある。
4) 煮込んだ肉を容器に入れる。長時間煮込んであるので、肉は手で簡単に細かく裂くことができる。肉を断片化する。
5) 次にスープを注いで冷やす。
6) ホロデーツを冷蔵庫で一晩寝かせた結果、完全に凝固した。マスタードやセイヨウワサビを添えて、少量を盛り付けすることができる。美味しく召し上がれ