1000年以上にもわたって、シチーはロシア人の食生活に深く根付いている。10世紀後半のキリスト教伝来とほぼ同時に、ロシアでもビザンティン帝国同様、キャベツがスープに入れられるようになった。
スープのレシピや作り方は時代とともに変化するのだが、変わらない大切なものがひとつある。それは酸味のある食材を加えるということである。
シチーとは季節感ゆたかで融通が利くスープ。たとえば、晩春にはスイバかイラクサが使われ、夏になるとキャベツが入れられる。もっとも知られている伝統的な食材はザワークラウトである。
シチーはビーガン料理でもある。というのも特に昔、1年に200日ほどもロシアでは断食が行われ、動物由来の食事が忌避されていた。その際、マッシュルーム、カブ、ライ麦粉、ソバが具として加えて、具と香りをより豊かなものにした。貧しい農民の家庭では水とキャベツだけでつくった「何も入っていない」シチーが食され、特別な場合だけ、タマネギや豚脂か魚が加えられたものだ。
さらに、長時間におよぶ旅にも持っていけるように保存食にする方法もあった。冬には凍らせ、夏にはザワークラウトを乾燥させた。野菜類は下ごしらえせずにスープに加えなければならないと考えられていた。
このスープの特徴的な酸味はザワークラウトのみによって得られるのではなく、時にはクワスや塩漬けマッシュルーム、酸っぱいリンゴなどを加えることで作られている。
今日は、ロシアでもっとも親しまれているブロスとザワークラウトでつくる「濃厚な」シチーを紹介しよう。
中央ロシアでは、牛肉の脂身がシチーに使われ、豚肉でつくるのは南部および西部ロシアが多い。両方使うこともある。18世紀前半にロシアにジャガイモが伝えられてからは、これもキャベツ・スープに入れられるようになった。
フランス料理の影響がロシアにおよぶ前は、スープを濃厚にするために、小麦粉の調味料が使われた。シチーとはすごく濃厚なものでなければならないのである。わたしも実際この材料を使っている。そしてこのスープはライ麦パンと新鮮なハーブ、濃厚なサワークリームと一緒に食されなくてはならない。しかし、シチーを美味しくする秘訣は、1日寝かせてから食べることである。
このスープを作るにあたり、わたしは伝統的なレシピを少し変えて現代風にした。たとえば、2種類の肉、牛骨とハムを使ってキャベツ・スープをつくる。酢キャベツは自家製のものを使い、タマネギと根菜を炒めて、とろみを出すためにカスタード状の小麦粉調味料を使う。
伝統的なレシピではトマトペーストは入れないが、最近は色付けのために少し加える主婦が多く、わたしもそうしている。もし、これらの食材を使って出来栄えが思ったのと違うと感じたら、材料を変えてもいいし、省略してもよい。
1. 肉を水に入れ、沸騰させる。
2. 沸騰したら、アクを取り、人参と玉ねぎを加える。弱火で2時間〜2時間半茹で、スパイスと塩を加える。
3. キャベツはバターを入れたフライパンで柔らかくなるまで炒め、ブロスに加える。
4. 2時間経ったら、野菜を準備する。人参、パースニップ、セロリを切る。玉ねぎは輪切りを半分にした形に切り、植物油で炒める。トマトペーストを小さじ1加える。
5. 肉が出来上がったら、ブロスから玉ねぎと人参を取り除く。
6. 小麦粉のドレッシングを作る。ブロスを少量グラスに注ぎ、冷ます。乾いたフライパンに小麦粉を入れ、混ぜ続けながら炒める。冷ましたブロスを加え、なめらかになるまで混ぜ合わせる。
7. ジャガイモを加え、10分煮る。
8. 炒めたキャベツ、野菜、肉を鍋に入れ、さらに10分煮る。
9. 小麦粉のドレッシングを加え、蓋をして一晩おいておく。
10. 翌日、シチーを温めなおしたら、ニンニクを絞り、ローリエ1枚を加える。
11. シチーはサワークリームと新鮮なハーブと一緒にサーブする。では召し上がれ!
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