なぜロシア人は英語で「sorry」と言うのか?:ソリアン・ソリアヌィチって誰?

画像:ナタリア・ノソワ
 ロシア人、とくに若いロシア人がうっかりあなたに突き当たったりしたとき、彼らは、ロシア語で謝るのではなく、英語で「sorry(ごめんなさい)」と言うだろう。これはいったいどういうことか? 

 今やロシアの街で、ロシア語の典型的な謝罪の言葉「Izvinite」や「Prostite」(ごめんなさい、すみませんというときの二通りの言い方)を聞くことはあまりない。

 キャッシャーが間違えたり、子供があなたにボールにぶつけたり、あなたがエスカレーターで通り道をふさいだために、誰かが後ろから優しくあなたを押したりするとき、あなたは多分ほとんどの場合、なまりのある英語で、「Sorry」と言われるだろう。たとえ彼らが英語を知らなくても、そう言うだろう。いったいどういうことか?

[ロシア語で]:あたしの好きなカップを割ったわね?!
- Sorry.

[ロシア語で]:あなた、私の全身にジュースをひっかけたわよ!
- Sorry.

[ロシア語で]:「誰が英語で “sorry”と言うのか」っていう記事はいったいいつになったら書き上がるの?!もう締め切りはとっくにすぎてるわよ!
- Sorry.

 これは初めは奇妙に聞こえる。「ごめんなさい」は、ロシア語にちゃんとそれに対応する言葉があるのだから、なおさらだ(つまり、これは、「ホットドッグ」や「アウトソーシング」などの他の借用語とは異なるのだ)。


より短くより簡単に

 しかし、ロシアの言語学者、アレクセイ・ミヘーエフは、ここには何も不思議なことはないと言う。

 「よく使われる短い言葉は、しばしば英語からロシア語に借用される。その種の簡潔な借用語と同じく、『Sorry』も短くて便利だ。ロシア語の『izvinite』や『prostite』は3〜4音節だが、『Sorry』は2音節だ。だから、言うのが簡単」。こうミヘーエフ氏はロシア・ビヨンドに説明した。

 氏はまた、「Sorry」の使用は、英語の普及とも関係があると強調した。ロシア人は、英語をますます知るようになり、ロシア語に「輸入」しているという。

 人々は実際、英語で「Sorry」と言うのがとても便利であることに同意しているようだ。「『izvinite』より短いし、もっと簡潔ね」。起業家のヴィクトリアさんは言う。

 有名なデザイナーのアルテミー・レーベジェフさんも、自分のブログでこれについてジョークを飛ばしていた

 「昔なじみのロシア語の言葉だけを使うことは、あなたの身内だけと寝るようなもので、あまり体に良くない。輸入された言葉は、新鮮な血のようなもの。言語が豊かになる」

 

Mr. Soryanとは誰か?

 しかし、シンプルな「Sorry」だけが唯一のオプションというわけではない。もっとエキゾチックなバリエーションがある。「Soryan」だ。ロシアのいくつかの都市で、とくに若い人々から、これを耳にするかもしれない。「Sorry」から派生した造語だが、変形された接尾辞がついており、まるでアルメニア人の姓のように聞こえる。

 このバージョンはさらにくだけたものだから、多くのロシア人がこれにがまんできない。「このソリアンとかいうアルメニア人の男はいったい何者だ?」。LiveJournalのユーザー、tapkinさんは皮肉っぽく尋ねる。「こいつにはイライラする。なぜ君たちは『izvini』と言えないのだ?」

 「Soryan」は、ロシア語で最も刺激的な言葉の一つとみなされており、「TheQuestion.com」(Quoraのロシア版といったところ)で、いちばんイライラさせられる言葉は何かと質問すると、人々はしばしば「Soryan」をリストに入れる

くだけた「Sorry」

 言語学者アレクセイ・ミヘーエフにこの点について聞くと、「やれやれ」という顔をした。「人々が『Soryan』と言うのは、ちょっと滑稽に、くだけた調子にしたいから。 その気持ちは共通している。『Soryan』と言うことで、人々は、自分がこの言葉にちょっと皮肉を感じていることを示したい。要するに、自分がロボットではなく、生きている人間として受け止められたいのだ」

 一部の人は、「Soryanのさらに先を行き、別の接尾辞をくっつけて、ロシアの父称みたいに聞こえる「soryanich」と言う。しかし、「Soryan Soryanich」みたいな言語学的怪物を耳にしてもビビる必要はない。結局のところ、あなたはそれを自分で使う必要はないのだから――あなたがそれを望まない限りは。

[ロシア語で]:あんた、私たちの結婚記念日のためのボリショイのチケットを買うのを忘れたわね?

- Soryan Soryanich!

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