ロシア語で「友だち」を表す10語:それぞれに微妙なニュアンスが

 ロシアでも、当然、男性間の友情は大いに賞賛されている。だから、ロシア語に「友人、兄弟、仲間、相棒」を指す言葉がいくつもあるのは不思議ではない。そして、それぞれに微妙なニュアンスがある。

Брат「ブラート」(兄弟)

 「Брат(ブラート)」は、もちろん、単なる友だち以上の関係を意味する。本当に親しく、いっしょにいくつかの試練をくぐり抜けたりした間柄だと、ロシア人はこの言葉で呼びかけ合う。そのいわゆる「指小形」に「братишка(ブラティーシカ)」があり、これはよりフレンドリーだ。

 一方、「братан(ブラターン)」は、リスペクトと権威のニュアンスを帯びる。

 カフカスの、イスラム教を信仰するロシア人は、すべてのイスラム教徒を「兄弟」とみなし、見知らぬ人にも使うことがあるので、ちょっと乱用気味だ。

 ロシアの路上で見知らぬ人から「ブラート」と呼ばれることも珍しくない。しかし、ほとんどの場合、その人はタバコや何らかの予備の品を欲しがっているだけかもしれないが。

Друг「ドルーク」(友だち

 ロシア語の「友だち、親友」を意味する言葉で、多くの派生語がある。「дружбан(ドルジバーン)」、「дружище(ドルジーシェ)」、「друган(ドルガーン)」など。これらはすべて「友だち」の意味を強調しているだけだ。「ドルーク」は、友情の深さの点で、すべての言葉のなかで「ブラート」に次ぐ。

 繰り返しになるが、見知らぬ人があなたに路上で何かを求めてきたときに、「ドルーク」と呼びかけ、悪意がないことを示そうとすることがある。

Кореш「コレシュ」(身内、親友)

 この言葉は、20世紀初めに犯罪界から生まれた。イディッシュ語で「korev」は、「親類」を意味する。ロシアの犯罪界では、多数のユダヤ人がイディッシュ語を話していたので、彼らの言葉がロシア語に広まったわけだ。しかし今では、「コレシュ」は、単に「親友」を意味し、犯罪に関係するニュアンスはない。

Земляк「ゼムリャク」(同郷人)

 「Земляк(ゼムリャク)」は、「同郷人」、つまり同じ土地の出身者を意味して用いられる。ちなみに、「земля(ゼムリャ)」は、ロシア語で「土地、大地」を意味する。

 この広大な国では、ロシアの他の都市や町からモスクワやサンクトペテルブルクに働きにやって来た人々は、しばしば同郷人と友だちになり、したがって「ゼムリャク」と呼ばれるようになる。親しみを込めた「指小形」の「ゼムリャ」もある。

Старик「スタリーク」(年寄り、老人)

 「Старик(スタリーク)」は、長年知り合いの男性に対してのみ使われる。皮肉なことに、年配者が若者に話しかけるときにも用いられる。もちろん、若者は「老人」ではあり得ないわけだが。

 ただし、少女、女性を「старуха(スタルーハ)」(老婆)と呼ぶのは、女子同士の間でも侮辱になる。

Кент「ケント」(仲間、相棒)

 「コレシュ」と同じように、「ケント」はおそらくイディッシュ語に由来しており、「(あなたを)知っている人」を意味する。この言葉は、犯罪界の俗語から入ってきたもので、今でもそこで使われている。

 ロシア人男性が誰かを「ケント」と呼ぶ場合、友情が本当に深く、共にいくつかの困難を乗り越えたことを意味する。

Кирюха「キリューハ」(飲み友だち)

 俗語の「кирять(キリャーチ)」(飲む)に由来し、酒好きあるいは飲み友だちを意味する。

Приятель「プリヤーチェリ」(親友未満の友だち、友人)

 ロシア人は親友を「приятель(プリヤーチェリ)」とは言いたくないだろう。なぜならそれは、まだ友情とは言い難い、そんなに深くない関係の人を指すからだ。確かに、「プリヤーチェリ」も、今後の付き合い次第では親友になり得るけれども、必ずそうなるとは限らない。

Знакомый「ズナコームイ」(知り合い)

 この言葉は、これらの言葉のなかで「最もフレンドリーでない」もの。知り合いではあるが、友だちや仲間ではない人を意味する。単に知っているだけで、必ずしも良い関係だとは限らない。

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Товарищ「タヴァーリッシ」(同志)

 「Товарищ (タヴァーリッシ)」は、「товар (タヴァール)」(製品)という言葉に由来し、当初はビジネス・パートナー、商売仲間を意味した。しかし、ソ連時代には、市民同士の一般的な呼びかけの言葉となった。男性だけでなく、女性も「タヴァーリッシ」と呼ばれることがあった。

 しかし今では、この言葉は、ソ連時代を連想させるので、あまり使われておらず、その使われ方は、「プリヤーチェリ」に似たところがある。この言葉については別稿がある。

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