ロシア人はこの植物を避けようとする。建物が建てられているあたりでは刈り取られていることが多いので、市街部ではあまりお目にかかることはないが、夏の休暇中に郊外に出かけた時、これに刺されたことを多くの人は覚えている。
草が生い茂ったところを歩いているとママが気をつけなさいと注意をしたものだ。脚を露出していると、突然脚が燃えるように痛くなる。痛みは数時間で収まるが、大事なことは掻かないようにするということである。
「ようこそ、または不法侵入」というソ連時代のコメディ映画がある。ピオネールのサマーキャンプが舞台で、少年たちが(両親の日をキャンセルするために)伝染病にかかったように見せかけようと裸でイラクサに飛び込む。
子どもをちょっと変わったやりかたでお仕置きするということは、帝国ロシアの時代もソ連の時代にもよくあったことである。それには父親のベルトがよく使われたものだが、イラクサの束もそうであった。子どもたちがどれほどこれを怖がったかは言いようもない。両親がイラクサを手に取った瞬間に子どもたちはすぐさまいい子になったものだ。
クリーンな場所で採取された若いイラクサは何百年の前から、とりわけ食料が欠乏している時代には、台所でも使われてきた。イラクサはスイバと同じようにピリ辛スープや緑のシチーを作るのに使われる。若いイラクサはヘルシーでビタミン豊富だ。刻む前に、湯通しして棘を取る。刻んだポテトと人参をお湯かブイヨンで茹でて、やわらかくなったらイラクサと他のお好みのハーブを加える。ロシアでは、半分に切ったゆで卵をそれぞれの皿に加える(または、スープが完成する前に生卵を鍋に落として5分間煮る)のが好まれる。イラクサはまたパンや焼き菓子の詰め物に使われることもある。
煮出したイラクサは古代より民間薬として治療のために使われてきた。ロシアの薬局では乾燥イラクサはティーバッグで売られている。胆石やひどい出血(月経時も含む)に効くという。ただし、使用前に医者に相談することをお忘れなく。
イラクサはロシア人の美の秘訣の一つである。今でも、美容師の中には、髪の毛を豊かに保ち、絹のように柔らかくてつややかにするためには、洗髪後にイラクサを煮出したものを髪につけるといいとアドバイスする人もいる。また、イラクサを煮出したものはニキビにも効き、またフェイスマスクにすれば肌を整える効果もある。
ロシア人は皆、ダーチャ(郊外のサマーハウス)と庭仕事に取り憑かれている。新鮮な野菜がいつも手に入る訳ではなかった時代、ダーチャの畑はとても役立った。今では、なんでも店で買えるようになったが、それでもダーチャで野菜を育てる伝統は受け継がれている。夏に向けて花を植えたり、芝生の手入れをするときの2つの敵がイラクサとタンポポである。ご想像の通り、イラクサを駆除するのはかなりの痛みを伴うものである。
ロシア・ビヨンドのニュースレター
の配信を申し込む
今週のベストストーリーを直接受信します。