大げさに語られるシベリアに関する神話

Alexander Kryazev
 シベリアは不毛の地?それとも巨大「強制労働収容所」?地球上でもっとも寒い土地にどうやって住むのか?・・・このように、ロシアでもっとも知られた場所のひとつであるこの土地については、かなり誇張された神話が伝えられている。

シベリアは独立した別の国

 まず初めに、シベリアとは実際はどんなところなのだろうか?西部のウラル山地から東部の太平洋岸まで広がる1310万平方㌔におよぶ地域である。シベリアは16世紀にコサックの頭領イェルマークの傑出した活躍によってウラル東部を征服して以来、ロシアの一部になった。しかし、シベリアとは「国」ではなく、行政単位でもないので、境界線については公式な定めがない。エニセイ川でシベリアは西シベリア、東シベリアの2つに分割される。シベリアの最東部は、歴史的にロシア極東と呼ばれている。

 しかしながら、現在のシベリアの地域にはかつてシビル・ハン国呼ばれたテュルク系国家があった。この国はロシアよりも古くから存在していたが、ついには侵略され、16世紀に滅亡した。

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シベリアは不毛の土地

チャラ砂漠

 シベリアは広大であるため、様々な地勢が混在している。極北地方には雪氷砂漠、南部にはステップと広葉樹林帯、しかし、大半は松、トウヒ、カラマツからなる針葉樹林帯、タイガに覆われている。

 しかしながら、シベリアにも、ある場所に、いわゆる砂漠が存在している!タイガと沼地帯に囲まれた東部シベリアにあるチャラ砂漠だ。しかし、この砂漠はとても小さく、面積はわずか50平方㌔にすぎない。

シベリアには夏がない

 もちろん、シベリアにも夏は来る。しかし、場所が変われば、その特徴も変わる。シベリア北部では夏はとても短く、1か月から1週間しかないが、シベリア南部のステップ地帯では暑い夏をまるまる3か月楽しむことができる。一方、クラスノヤルスク地方の最北の地は1年中冬で、ヤクーツクでは夏でも永久凍土が融けることがない。 

シベリアは流刑の地

 かつてはそうであったが、今はもう違う。17世紀以降、シベリアの厳しい生活環境に加えて、シベリア僻地の開拓と入植の目的のため、多くの囚人がシベリア各地に流刑された。たとえば、トボリスクはフョードル・ドストエフスキーが囚人として流された場所である。ソ連時代には、シベリアの多くの場所にグラーグ(強制労働収容所)がつくられた。

 しかしながら、シベリアの産業が発達し、都市化が進んだのは、ここに眠っていた地下資源のおかげであった。シベリアには石炭、金、銅、ダイヤモンドなどのロシアの地資源の大半がある。シベリアの河川にはロシア最大級の水力発電所が5か所あり、歴史的にプラントや工場が設けられている。強制労働収容所がなくなってからは、シベリアはもう流刑の地ではなく、重要なロシアの工業地域となっているのである。

シベリアは地球上で最も寒い土地である

 地球上最寒の場所は実はロシア国外の南極高原東部である。しかし、シベリアにおいてロシア人も実に厳しい極地環境に生活しており、しかも零下50度の中マラソン大会まで開いた。そして、ロシア最寒の地はシベリアにある。

シベリアの深い森

エニセイ川沿いの森、クラスノヤルスク地方にて

 ほぼその通りであるが、すべてではない。シベリアの森では山火事が毎年のように発生し問題となっている。260万平方㌔、言い換えればシベリアの51%が森林に覆われている。しかし、残念ながらその利用状況はうまくやっているとは言えず、効率性も悪い。しかし、シベリアの森は居住可能なのである。

シベリアには誰も住んでいない

洗濯物を集めているオムスク州の住人

 シベリアに住むロシア人は全人口の25%で、3千7百万人以上にもおよぶ。ロシアの人口分布は偏っており、ヨーロッパ側に68%が居住しているが、面積でいうとここは全体の20%にすぎない。

 ロシア人はどうしてシベリアの大半がそうであるような、そんなに厳しい土地に住むのだろうかと考える人が多い。しかし、信じられないかもしれないが、ここに住むメリットも確かにあるのである。

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