2023年、ロシアにお金を持ち込む方法

Yegor Aleyev/TASS
 一見難しそうに思えるが、実は、送金を含め確実にロシアにお金を持ち込むいくつかの方法がある。

 ビザ、マスターカード、アメリカン・エクスプレス(アメックス)の3社が2022年にロシアでの決済事業を停止したことにより、外国で発行されたクレジットカードによるロシア国内での決済は不可能となっている。この記事では、ロシア滞在中のお金に関する問題を解決するためのいくつかの合法的な方法を紹介する。

1万米ドルの上限

 ロシア国内に資金を移動する一つの方法は、入国の際に物理的に現金で持ち込むことだ。一般に流布しているイメージとは違って、実は持ち込む金額に制限はない。ロシア政府はロシア国内への外国通貨の流入に規制を設けていないからだ。

 しかし、ロシア国内に持ち込む現金の合計が1万米ドル(相当額のすべての外国通貨、トラベラーズ・チェックも含む)を超える場合は、ロシア税関で申告する必要がある。その際、1万米ドルを超過する分ではなく、持ち込む現金の総額が申告されなければならない。EUのいくつかの国では、個人がロシアに持ち込むことのできるユーロについて独自の制限を課しているので注意が必要だ。

  頻繁にロシアを訪れるのでない場合は、できる限り多くの現金を持ち込んでおいたほうがよい。現時点で最も低コストで簡単にロシアへ資金を移動する方法だからだ。

 定期的にロシアを訪れるアメリカ人のデイヴィット・ダヴィドヴィッチはこう話す。「(アメリカから)ある程度の現金を持ち込んで(ロシアの銀行に)預けることはいつでもできますが、1万米ドルを持ち込むために毎回飛行機で往復するというのはとても高くつきます。モスクワへの飛行機も安いものではないですから」。

 しかし、注意すべきことがひとつある。現在、総額1万米ドルを超える外国通貨をロシア国外に持ち出すことは禁じられているのだ。この上限は、米ドル、ユーロ、英ポンドなど全ての外国通貨に適用され、米ドル以外の外国通貨の場合、出国する日のロシア中央銀行の定める為替レートで計算される。また、トラベラーズ・チェックや国債などの有価証券も同様の上限に含まれる。ロシアルーブルのみこの上限が適用されない。

  個人がロシア国内に外国通貨を持ち込み、税関で申告をした場合は、たとえその総額が1万米ドルを超える場合でも、当該の外国通貨をロシア国外へ持ち出すことが可能だ。ただし、その外国通貨が確かに同じ人物によって持ち込まれたことを明示するロシア税関発行の証明書がある場合のみである。上限額以上の外国通貨を持ってロシアを出国する際には、あらゆる関係書類を用意しておくのが最重要となる。不法に1万米ドル以上の外国通貨をロシア国外に持ち出そうとした場合、刑法上の犯罪として扱われ、禁固刑を受ける可能性がある。 

 また、ロシア国外へ持ち出す金額が3000米ドル相当を超える場合も税関での申告が必要となる。申告が必要な金額は3000米ドル相当超過分ではなく、持ち出す総額となる。

ロシア国内の銀行口座

 外国人もロシア国内に銀行口座を開設して、持ち込んだ現金を預けることができる。

 口座開設のための必要書類は銀行によって異なるが、一般的には、パスポート、公証人によって認証されたパスポートの翻訳、そしてロシアで契約された電話番号が必要だ。

 「カード所有者の氏名がキリル文字で記された公的な書類が必要となります。ビザがそうです。氏名がキリル文字で書かれていますから。もし、外国市民の方がビザをお持ちでない場合は、公証人によって認証されたパスポートの翻訳が必要となります」と、ロシアの私営銀行の職員は言う。

 先述のデイヴィットは、ロシアの国営銀行ではアメリカ人であることを理由に口座を開設することができなかったので、私営銀行で開設したと話している。しかし、国営銀行のある支店の職員がロシア・ビヨンドに語ったところでは、外国人が口座を開設することを阻むものは何もないはずであり、上記の書類を提出することによって、どの国の市民でも自分の名前で銀行口座を作ることができる、とのことだ。

 銀行間の国債決済はSWIFT(国債銀行間通信協会)のシステムを通して行われる。ロシアではSWIFTのネットワークから除外された銀行もあるが、SWIFTを利用した海外からの送金を受け付けている銀行も残っている。あなたの国の銀行がSWIFTによるロシアへの送金を扱っているかどうかは、個々の銀行が独自のルールを設けているので、ケースバイケースとなる。

 一般に、SWIFTによる送金には、固定または1−5%の変動手数料が掛かり、着金までの期間は2−7日を要する。送金限度額は送金元の銀行が設定しており、ロシア側の銀行は外国からの送金金額に制限を設けていない。

  ロシアの銀行口座の所有者は、202239日以前に口座に入金された外国通貨に限って、1万米ドル(または相当額のユーロ)を上限に引き出すことができる。202239日以降にロシアの銀行口座に入金された外国通貨はルーブルでしか引き出すことができない。

あまり知られていない代替手段

 国際決済を扱ういくつかのサービスもロシアへの送金手段として利用することが可能だ。Western UnionWiseMoneyGramTransferGoの各サービスは、ロシアへ / からの送金をもう受け付けていないが、まだ利用できるサービスもある。たとえば、KoronapayUnistreamContactなどは、ヨーローッパの多くの国でロシアへの送金手段として現在も利用されている。

  さらに知られていない別の方法もある。緊急事態にある外国市民にとって役に立つかもしれない外国からロシアへの送金手段だ。

  ロシアに滞在するアメリカ人の場合は、大使館を通じて米国務省の送金システムを利用することができる。しかし、大使館と連絡を取り、個別の事例に応じたサポートが必要となり、結果も保証されるものではない。

 Western Unionなど多くの国際決済システムがロシアへの送金を受け付けていない状況では、仮想通貨も国際決済の代替手段となり得る。だがこの方法は、送金側にも受け手側にも高いレベルの技術的な知識とスキル、経験が必要となる。

合わせて読みたい:2023年、ビザなしでロシアに行ける国は? 

新しい記事をお見逃しすることがないよう、SNSでぜひフォローをお願いします!>>>

もっと読む:

このウェブサイトはクッキーを使用している。詳細は こちらを クリックしてください。

クッキーを受け入れる