チェブラーシカの“日本公演”:耳の大きな愛らしい主人公を描いた和製アニメ3作

8月20日は、チェブラーシカの「父親」である児童作家エドゥアルド・ウスペンスキーによると、この不思議で愛らしい生き物の「誕生日」だった。

 チェブラーシカ――耳が大きな優しい「正体不明の動物」――をめぐる最初の絵本は、1966年に出ている。その3年後には、最初の人形アニメが公開された。以来、主人公は、我々の心に生き続けている。そして、我々と同じように、チェブラーシカも毎年誕生日を祝う。その誕生日は、彼の「父親」である児童作家エドゥアルド・ウスペンスキーがかつて言ったように、8月20日だ。祝日には楽しいことを思い出すのが通例だから、チェブラーシカの“訪日”の様子を振り返ることにした。訪問は三度だ!

『チェブラーシカ あれれ?』(2009~2010年)

 チェブラーシカが日本で広く知られるようになったのは、比較的最近、2000年代になってからだ。ロマン・カチャーノフ監督とレオニード・シュワルツマン美術監督による人形アニメが、初めて大々的に映画館で上映されたときのこと。そして、早くも2009年に、日本でのリメイク版が日本のテレビ(テレビ東京系の「のりスタ100%」)で放送された。シリーズ『チェブラーシカ あれれ?」がそれで、 工藤進監督による 。各3分間で、全26話。

 これは素晴らしいシリーズだ。ソ連のオリジナルは人形アニメで、各10~ 20分の4本の短編からなるが(1969~1983年)、日本版は描画のアニメだ。しかし、アニメーターたちは、キャラクターの外見、動き、ディテールを、愛情を込めてそのまま引き継いでいる――建物やドアの不均等なプロポーションにいたるまで(ドイツ表現主義の映画を思わせる)。「動物園」の文字もロシア語のままだ。

 『チェブラーシカ あれれ?』は、リメイクというよりは続編と言ったほうが良いだろう。最初のエピソードのみがロシアのシリーズを踏まえている。筋はほぼ同じだが、思い切って簡略化されている。チェブラーシカは、オレンジの箱に入っているが、店に置いてあるわけではなく、郵便配達員が、自宅にいるワニのゲーナに直接、このサプライズの荷物を届ける。

 この小動物が味わっている、自分が何者か分からない「実存的な」危機。ソ連のオリジナルの初回作品のテーマだ。ここでゲーナと動物園の仲間たちは、この悩みを一気に根本的に解決してくれる。「君はチェブラーシカ。僕たちの友だちだよ」。これだけだ。こうして悩みはなくなる。

 日本のリメイク版の第4話からは、完全オリジナルストーリーが始まり、チェブラーシカは、仲間たちのおかげで世界を発見し、認識していく。シリーズ全体は合計で1時間少々だが、ゲーナ、シャパクリャクのほか、ライオンのレフ・チャンドルやキリンなど、他の多くのキャラクターも人気を博した。

2010年版人形アニメ

 それから間もなく、別のリメイク続編が公開されたが、こちらは人形アニメだった。しかも、第1話(全4話)の『こんにちはチェブラーシカ』(わにのゲーナ)は、1969年のオリジナル・シリーズの第1話『わにのゲーナ』を細部にいたるまで再現している。

 あまりにも本物らしかったので、チェブラーシカの視覚的イメージを考案した美術監督レオニード・シュワルツマンは、この日本の人形アニメを見せられたとき、それがリメイクだとは分からなかったという。

 この成功は、中村誠監督率いる国際チームのよく連携のとれた作業のおかげで達成された。日本と韓国のアニメーター以外に、旧ソ連圏の美術監督、ロシアのミハイル・アルダシンとベラルーシのミハイル・トゥメリャも、とくにオリジナルの精神を維持する点で、このシリーズに多大の貢献をしている。

 さらに3つのエピソードが、日本および旧ソ連圏のライターが書いたオリジナル脚本に従って製作された。その1つでは、チェブラーシカとゲーナは、自分たちがやって来たサーカスで仕事をもらおうとするが、採用してもらえない(『チェブラーシカとサーカス』)。別のエピソードでは、動物園でゲーナの代わりにチェブラーシカが登場するが、訪問者たちはだまされない。すぐに彼がワニではないことに気づいた(『チェブラーシカ動物園へ行く』)。最後に、チェブラーシカとゲーナは、老奇術師が行方不明の孫娘を探すのを助けるが、シャパクリャクは、控えめに言っても、手伝ってくれない(『シャパクリャクの相談所』)。

『チェブラーシカ:ともだち、みつけた』(2020年)

 日本の人形アニメシリーズ公開の10周年に、ゲーナとチェブラーシカが別の形で知り合うバージョンがリリースされた。これは長崎悠監督による5分間のアニメ。チェブラーシカでは初めてとなるフルCG作品で、人形の質感とボリュームを見事に生み出している。このバージョンでは、チェブラーシカの入った小包がゲーナの職場に、つまり動物園に直接届けられる。出会った直後に、孤独な両者は友達になり、そして冒険が始まる。

 この動物園では、スターがもてはやされ、来園者の人気が食事に直接影響することが分かった。ゲーナはランキングの最下位なので、オレンジをもらう権利がない。この状況を打開すべく、主人公たちは、子供たちのアイドルであるパンダのふりをすることにした。

 興味深いことに、この物語は、複数のエピソードからなる日本の漫画および、それを原作とするアニメ『しろくまカフェ』の筋と似たところがある。『しろくまカフェ』の世界では、動物たちも人間と共存しており、社会の完全な一員だ。動物もみんな仕事をしているのだ(たとえば、動物たちはやはり動物園で働いていて、パンダは国民のアイドルだ)。人間たちといっしょにカラオケに行ったり、デートをしたりしている。

  『チェブラーシカ:ともだち、みつけた』は、新シリーズの初回となるはずだった。しかし、版権や契約条件などをめぐる対立、争いのために、残念ながら、初回のみとなった。

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