北極圏内のロシアの7大都市

ヴォルクタ

ヴォルクタ

Legion Media
 過酷な気候と物流の困難さから、極圏の人口はわずか400万人程度。その半分以上がロシア国民だ。

 ロシアの国土の2割近くは極圏内にあり、その人口は230万人を超える。気候が厳しく、個別の住宅で暮らすには不向きなため、人口の殆どは都市部に集中している。ロシアの複数の街が極圏の大都市となった所以である。

1. ムルマンスク人口267,422

 世界最大の極圏都市は、ロシアのムルマンスク。北極線の北約200キロ(68°58′)に位置する。バレンツ海のコラ湾に面するこの地には、ロシア最大級の海港がある。1916年に誕生したムルマンスクは20世紀を通じて何度も歴史の表舞台に登場した。革命期には白軍や干渉軍の活動拠点だった。大祖国戦争中に都市は壊滅した。

 現在のムルマンスクは1960~80年代の「パネル住宅」と、1950年代の数少ない煉瓦造り建築から成る。もちろん、近代的なショッピングセンターや集合住宅もある。

 ロシア北部の都市では、建物のファサードをカラフルな壁画で彩ることが多い。ムルマンスク近郊にも、そうした独特のグラフィティが点在している。

2. ノリリスク人口175,237

 極圏で2番目に人口が多いのもロシアの都市だ。クラスノヤルスク地方のノリリスクは、北極線から北に300キロの地点(69°20′)に位置する。

 ノリリスクの誕生は1935年(制度上の都市となったのは1953年)。1950年代までは強制労働によって建設された街だった。

 ノリリスクの環境は、ロシアでも最も過酷な部類に入る。雪深く長い冬に加え、強風が吹き荒れるからだ。だがそれにも関わらず、ノリリスクは巨大工業都市として発展し、ニッケル、銅、コバルト、パラジウムの採掘と加工が行われている。

 写真を見ると、ノリリスクはスターリン・アンピール様式の美しい中心部と、カラフルな「パネル住宅」が並ぶ住宅街、そして工業地帯から成る、典型的なソ連型工業都市に思われるかもしれない。しかしノリリスクには、猛吹雪の中でも生活できるよう、様々な工夫を凝らした建築も多く、興味を惹く。詳しくは、こちらの記事を参照。 

3. ヴォルクタ人口56,985

 ヨーロッパ最東端の街で、北極圏では4番目(ノルウェーのトロムソに次ぐ)に大きい都市だ。ヴォルクタ(67°30′)は1936年に誕生した街で、現在に至るまで石炭の採掘が続いている。鉱山の労働者街はヴォルクタの周囲にリング状に配置されている。

 人口は増え続け、1991年には11万7千(近郊を含めると21万6千)を数えた。しかし、ソ連崩壊に伴う旧来の社会システムの瓦解と深刻な経済危機により、ヴォルクタの人口は急減。その結果、現在もゴーストタウン化した地域や集落が残る。

 国内で最も住宅価格が低い地域の1つであり、住民が住宅を無料で手放して、新しいオーナーに公共料金を負担してもらうケースも多い。自宅を市当局に譲渡する住民もいる。

4. アパチートゥイ人口48,748

 ムルマンスク州の都市アパチートゥイ(67°34′)は、極圏の都市としては世界で5番目の規模だ。1926年、ムルマンスク鉄道の建設者の集落として始まった。工業化の時期になると、近くで燐灰石の採掘が始まったのに伴い、次第に発展していく。

 こんにちのアパチートゥイは、観光スポットとしても人気が高まっている。ヒビヌイ山脈とイマンドラ湖の景観が人気のポイントだ。

5. セヴェロモルスク人口43,394

 極圏の都市としては世界で6番目の規模であるセヴェロモルスク(69°04′)もムルマンスク州にあり、ムルマンスクからの距離はわずか25km。人々がこの地に居住し始めたのは1890年代だが、制度上の都市となったのは1951年である。

 ロシア北方艦隊の基地があるセヴェロモルスクは閉鎖都市(ZATO)である。つまり、この街では余所者の来訪はもとより期待されていない。だが、それでも事前に許可を経て、現地の旅行会社のツアーを購入した観光客がセヴェロモルスクを訪れている。

6. モンチェゴルスク (人口39,477)

 ムルマンスク州のもう1つの大規模工業都市。モンチェゴルスク(67°56′)は1935年、ニッケルと銅の採掘開始に伴って誕生した都市だ。制度上の都市になったのは1937年。イマンドラ湖の湖畔と、モンチェトゥンドラ山地に挟まれた風光明媚な土地である。山地の頂上には、人気のスキー場「ロパリスタン」があり、11月からスキーを楽しめる。

7. カンダラクシャ人口28,438

 ムルマンスク州最南端の都市も、北極線の内側(67°09′)だ。カンダラクシャは白海沿岸で最も古いポモール集落の1つで、その始まりは1526年とされる(ポモールとは、先祖代々漁業を生業とする人々で、ロシア北方文化の担い手である)。しかし、人類はそれより遥か以前からこの地に居住を始めていたらしく、その歴史は数千年前まで遡れる可能性がある。カンダラクシャ近郊には謎の石造りラビリンスが残されているが、その用途は不明だ。

 この地では19世紀末頃から製材業が発展し始め、やがて鉄道が敷かれ、海港も開かれた。ソ連時代にはアルミニウム工場も建設されたが、これは現在でも極圏唯一の同種の工場であり、稼働を続けている。

おまけ:サレハルド(人口48,619

 ヤマロ・ネネツ自治管区の首府であるサレハルドも極圏の都市であり、北極線上に位置する(66°32′)世界で唯一の都市でもある。この記事でご紹介した他の都市と違い、サレハルドには白夜はあるが、極夜が無い。

 汚染源となるような工場も無く、住民の大半はオフィスワークか、学校や店舗などで働き、あるいは観光業に従事している。サレハルドには、華やかな地元の祭り「トナカイ放牧の日」もある。毎年、ツンドラの住民がトナカイの群れを伴って街に集まり、街の人々にトナカイ放牧者たちの文化を伝えている(この祭りのルポは、こちらの記事を参照)。

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